昔、マニュアル本にはまったことがあります。
「本」を読まない生き方をしてきたので、あまり、知識を増やさないまま大人になりました(笑)。
大人になるまではただ、なんとなく、目の前にある楽しいことで暇を潰せばよかったのですが、さすがにそれではダメだろう、と心に危機感が生まれてきます。
うまくいかない経験をすれば、それを何とかしようと思うようになりました。
そんな時、書店にはたくさんのマニュアル本がある事を知りました。やっと(笑)。
このジャンルの本は今でも大きなスペースを使い、売られていますから、多くの人の興味を引き付けるのでしょう。
そして、そのマニュアルの細かさといったらものすごいです。
どうしていいのか、わからない!
そんな悩みを持っている人ならば、その書店の一角に行けば、必ず、解決してくれそうな一冊と出会うはずです。
本を読めなかった人間が知識を得る。
もう、これだけで自分が成長した気になります。
数年間はそれで楽しかったのですが、どうも、ちょっと、違うな、そんな気持ちに襲われました。
どうやら、どうすればいいのかは「わかる」けれども、実際には「できない」という自分を見つけ、板挟みになりました。
ただ、今のように全体が見えているわけではないので、その不満を解消するために、また、本屋へと行くわけです。
新たに自分の中に生まれた悩みを解決してくれるものはないかなぁ、と。
そして、それを思い、探せば、やはり見つかります。
新しい本を買って数日は気分がいいんです。
これで、自分は変われるかもしれない!
そんな気分になる事が出来ます。
しかし、実際にはまた、おかしいなぁ、という気持ちになり、また、書店に足を運びます。
もしかしたら、こんな事も本が好きになるきっかけになるかもしれません。
でも、私は相変わらず、本が苦手です。
古典や小説に興味は進みませんでした。
知識を得て喜ぶことができました。
その知識の理屈がわかり、なるほどと思えます。
しかし、実践をすればそれがうまくいかないのです。
そして、最初に戻ります。
今の状況を解決する方法を探します。その繰り返しでした。
繰り返しをしていってさらに、知識は増えるのですが、やはり、最後の「できる」をクリアするのが本当に困難!
どんどん自信がなくなりました。
知識が増えているのですから、これはこれでいいじゃないか、と思う人もいるかもしれません。
でも、私は「わかる」、という事よりも「できる」事にこだわっていました。
どうしたら、できるようになるんだろう・・・。
その悩み、疑問に対して納得できる答えは書店、ネットを探しても見つかりませんでした。
努力すればいいとか、願えばいいとか、運命は決まっている、など、いくつか答えは得ましたが、どれも、信じられなかったんです。
ただ、私は運が良かったのです。
たまたま「身体の感覚」を探すという事を楽しみにする事が出来ていたから。
身体感覚の世界は不思議です。
そして、何千年も前から、世界中でこの身体の不思議さと、秘めた力を得るための工夫、研究が残され、伝えられてきます。
ひと昔まであれば絶対に聞くことができなかったであろう秘伝も簡単に手に入れることができるようになりました。
この世界も知識を得るとやはり、楽しいです。
たくさんの方法を学ぶと、自分が変われる、変わった気持ちになれます。
しかし、ここでも、また、「できない」という壁に当たります。
ただ、世の中はルールを作り、環境を変えることで楽しさを競い合うようになりましたから、出来ない、という壁は見えにくくなりました。
たまたま私はそのルールを外しながら自分の身体の可能性を探す楽しさを得ていたのです。
この楽しさはまさに、わかることをできることへと変えていく作業だったのです。
例えば両手をぎゅっと抑えられる。そして、その手をいかに上げるか。こんなことを繰り返して、身体の不思議を追っています。
これを行うためのコツはいくつもあります。
腰を落としたり、手を体側につけたり、相手の弱いところを責めたり、心理的なトリックを使う方法もあります。
新しくなにか見つかれば手は上がります。
抑える相手はそのコツがわからなければ、ずっと、やられっぱなしになります。
しかし、そのコツが明確であれば、それを伝えた瞬間、また、しっかりと手を抑えていく事ができます。
競技としての勝ち負けを第一目的とするならば、このコツこそ秘伝になりますが、私は研究が第一目標。
見つけたコツはすぐに、全部、相手に伝え、抑えてもらうようにします。
言葉にすれば簡単なことですが、こういう稽古はほとんど、行われません。
多くのできない人がいるから、組織が維持されていくんですよねぇ・・・。
たまたま、普通ではない楽しみ方を知って、少し、長く時間を費やしたので、いつの間にか、それを習慣として身につける事ができました。
この感覚がまさに、わかるをできるに変えること、とわかったのです。
なにかを求め、答えを求め手に入れた「後」、いかにそれをできるようにするか、です。
ポイントは「できないと思った瞬間」です。
失敗だぁ、と思った瞬間、その原因をどこに見るかです。
失敗と思った瞬間、無意識は答えを探します。
この時、「外」に答えを探すと、外に答えが見つかります。書店に行って気になる本と出会うというのはこれ。
でも、もう一つ、方法はありました。私を救ってくれたのは「内」でした。
失敗した瞬間、その方法を変えずに、それをやりきれなかった「自分」を追うのです。
自分の内面をとにかく納得のいくものとする。それを追求し続けます。
失敗という状況はほかの誰かからみたら、失敗にならないかもしれません。失敗と決めているのは自分です。
失敗をして、気持ちを落とせば、目的地へと進むスピードが落ちます。諦めてしまい、目的を失うかもしれません。
しかし、失敗で気持ちが落ちなければ、ちょっと先へと進むことができます。
身体感覚の追及はそれを楽しくさせてくれたので、気が付けば、内面を探る力を得ることができたようです。
内面を探る方法として、ヨガや座禅、瞑想など、沢山あります。
その方法として書籍もあるし、セミナーも数多くあります。
ただ、世の中、その道の専門家であるお坊さんだって困っている時代です(笑)。
どの方法も言葉になったり、流儀流派となってしまうと、もう、それは「外側」です。
なんでもいいから、試す方法は学びます。
後はそれをひたすらできるように、自分の「内側」を追い続けます。
疑うのは手順ではなく、自分です。
ただしこの時、自分の中になんでもできる、という確信も必要です。
身体感覚の研究で得たなによりのものが、これ。自分の中に潜んでいる無限の可能性を確信できた事かもしれません。
今、これを読んでくれているあなたは自分の中に無限な可能性を信じる事ができますか?
多くの人は老いることで、さらに自信をなくします。
しかし、感覚を手掛かりにしていけば、姿勢を作る精度が上がり、どんどん、身体を楽に動かすことができるようになります。
実際に手を合わせればそれを五感を通して伝えられますが、ここでは文字だけ、皆さんの想像力に任せるしかありません。
ぜひ、ご自身の持つ、可能性を信じ、自分にはできるはずだ、と工夫、研究を進めてください。なにかを変えれば、結果は変わります。変える力を得れば、目的の場所へと近づいていく事が出来ます。
試行錯誤を楽しんでください。